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水戸地方裁判所 昭和47年(ワ)236号 判決 1975年10月08日

原告

大西政一

ほか二名

被告

鈴木正広

ほか一名

主文

被告鈴木正広は原告大西政一に対し金一〇万九、九四四円、原告須藤昌宏に対し金六〇万一六五円、原告瀬戸運輸株式会社に対し金三七五万三、八六九円および右各金員に対する昭和四七年一一月八日より完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。

原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用中原告らと被告鈴木との間に生じた分はこれを二分し、その一を原告らの、その余を同被告の負担とし、原告らと被告茨城日産自動車株式会社との間に生じた分は原告らの負担とする。

この判決は原告ら勝訴の部分に限り、かりに執行することができる。

事実

原告ら訴訟代理人は、「被告らは各自原告大西政一に対し金三〇万八、〇三八円、原告須藤昌宏に対し金六〇万五、一八一円、原告瀬戸運輸株式会社に対し金七六五万二、六五二円および右各金員に対する本訴状送達の日の翌日より各完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決および仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、

一  原告大西政一は昭和四六年七月二九日午後九時五五分ごろ営業用大型貨物自動車(香一い四、一七七号)(以下原告車という)を運転して国道六号線を北(仙台市方面)から南(東京都方面)へ向つて進行し、福島県いわき市泉町滝尻字泉町一七七番地先(下川歩道橋前)交差点附近にさしかかつたところ、同所で東から西へ走行して来た被告鈴木正広運転の自家用普通乗用自動車(茨五み二二八九号)(以下被告車という)の右前側部に衝突し、原告車はさらに約三〇メートル離れた訴外安島自動車整備工場こと安島勲方に突入して停止したが、その際原告大西および原告車に同乗していた原告須藤昌宏は負傷した。

二  被告鈴木は被告車を所有し、その運行供用者であり、かつ、本件事故は幹線国道六号線を夜間横断するにつき一時停止するなどして左右の安全を確認すべき注意義務を怠り、狭い道路から右国道に突然飛び出して来た同被告の過失により発生したものである。

また、被告茨城日産自動車株式会社は被告車をその運行の用に供していたものである。即ち、被告鈴木は被告会社に雇用され、そのセールス業務に従事していたものであり、営業上の必要から被告車を被告会社より買い入れ(ただし名義上の買主は被告鈴木の兄訴外鈴木正義)、そのセールス業務に使用し、ガソリン代等一切は被告会社から支給されていたものである(なお、本件事故当時所有名義はまだ被告会社になつていた)。さらに本件事故は被告鈴木の右営業活動中(その帰路)において発生したものである。

よつて、被告鈴木は本件事故によつて発生した人的損害については自動車損害賠償保障法(以下自賠法という)三条により、物的損害については民法七〇九条により、被告会社は人的損害については一次的に自賠法三条により、二次的に民法七一五条により、物的損害については民法七一五条により各自賠償すべき責任がある。

三  損害

1  原告大西分金三〇万八、〇三八円

(一)  治療費金一八万五、二六八円

原告大西は本件事故により頭部挫傷、右大腿部挫傷、右拇趾骨々折、右小趾骨中足骨折兼右足背部挫傷、左手小多稜骨々折兼左手部挫傷の傷害を蒙り、事故当日である昭和四六年七月二九日より同年八月一二日まで、および同月一六日より同年九月一一日まで合計四二日間入院し、加療を受けたが、治療費として金一八万五二六八円を要した。

(二)  入院雑費金一万五〇〇円

一日金二五〇円として入院期間四二日間分

(三)  逸失利益金一九万四、五三五円

原告大西は本件事故によつて昭和四六年七月二九日より同年九月一一日まで四五日間勤務先である原告瀬戸運輸株式会社を欠勤したが、その間支給されなかつた賃金を一日につき金四、三二三円として計算したもの。

(四)  慰謝料金二一万円

原告大西の前記受傷の部位、程度、治療経過等を考慮すれば、同原告が本件事故によつて蒙つた精神的苦痛は金二一万円をもつて慰謝せらるべきが相当である。

(五)  損害の填補金三二万二六八円

自賠責保険から給付を受けた金額

(六)  弁護士費用金二万八、〇〇三円

原告大西は原告ら訴訟代理人に本件訴訟を依頼するに際し、成功報酬として第一審判決言渡と同時にその認容額の一割を支払う旨約した。よつて、弁護士費用は前記(一)ないし(四)の合計額六〇万三〇三円から(五)の金額を差引いた残金二八万三五円の一割にあたる金二万八、〇〇三円となる。

2  原告須藤分金六〇万五、一八一円

(一)  治療費金一一万九、二三五円

原告須藤は本件事故により左下腿挫創(伸展筋腱断裂)により事故当日である昭和四六年七月二九日より同年八月一一日まで、および同月一三日より同月三一日まで合計三三日間入院し、退院後も同年九月末まで通院加療を受けたが、その治療費として金一一万九、二三五円を要した。

(二)  入院雑費金八、二五〇円

一日金二五〇円として入院期間三三日間分

(三)  逸失利益金二三万二、六八〇円

原告須藤は本件事故により昭和四六年七月二九日より同年九月八日まで四二日間勤務先である原告瀬戸運輸株式会社を欠勤したが、その間支給されなかつた賃金を一日につき金五、五四〇円として計算したもの。

(四)  慰謝料金一九万円

原告大西の前記受傷の部位、程度、治療経過等を考慮すれば、同原告が本件事故によつて蒙つた精神的苦痛は金一九万円をもつて慰謝せらるべきが相当である。

(五)  弁護士費用金五万五、〇一六円

原告須藤は原告ら訴訟代理人に本件訴訟を依頼するに際し、成功報酬として第一審判決言渡と同時にその認容額の一割を支払う旨約した。よつて、弁護士費用は前記(一)ないし(四)の合計額五五万一六五円の一割にあたる金五万五、〇一六円となる。

3  原告瀬戸運輸株式会社分金七六五万二、六五二円

(一)  原告車修理費金二〇八万一、九五七円

原告車は原告会社の所有であるが、本件事故によつて破損し、原告会社はその修理費として金二〇八万一、九五七円を要した。

(二)  原告車回送料等金七万五千円

原告会社は原告車をいわき市より香川県三豊郡豊中町の修理工場株式会社豊中自動車整備工場(以下豊中自動車という)まで原告会社の車両を使用して運んだが、その運賃として金五万五千円(他社に依頼して運べば通常運賃として金一一万円を要する)を要し、また、原告車を右運搬車に積込むのにレツカー代金二万円を要した。

(三)  事故処理費金二万円

事故当日、原告会社はその東京営業所より事故現場に係員一名を派遣し、負傷者救出等事故処理等にあたらせた人件費等。

(四)  休車料金二〇八万円

原告車は昭和四六年七月二九日より同車の修理が完了し豊中自動車から引渡を受けた昭和四七年二月二一日までの二〇八日間休車したが、右期間中一日金一万円として計算した休車料(なお、原告会社は一一トン車一台につき一日平均金四万円の収益をあげ、内純利益は約金一万円である)。

(五)  安島勲への賠償金二七〇万円

被告車と衝突した原告車は約三〇メートル離れた安島自動車整備工場こと安島勲方工場へ突入し、同所に保管されていた車両七台と同工場内機械設備等を大破し、右安島より金四〇五万八七五〇円の損害賠償請求を受けた。しかも、安島は示談解決に至るまで原告車を留置しその引渡を拒んだため、原告会社としては損失の増大を防ぐため、昭和四七年二月一〇日安島に金二七〇万円を支払つて示談解決した。

ところで、原告大西運転の原告車と被告鈴木運転の被告車が衝突したことにより、原告車が安島方に突入し、これに前記損害を与えたものであるから、安島に対する関係では原告大西と被告鈴木は共同不法行為者の関係にある。また右原・被告はいずれもその勤務先会社の業務の執行中であつたのであるから、原告会社は原告大西と、被告会社は被告鈴木とそれぞれ連帯して、民法七一五条に基づき右安島の損害を賠償すべき義務がある。一方、共同不法行為者相互間においては、その過失割合に応じて負担部分が定まり、自己の負担部分を越えて弁償をなした者は他の不法行為者に対して、その越えた部分につき求償をなすことができる。共同不法行為者相互における右の関係は、その不法行為者に民法七一五条の責任ある使用者がいる場合には、使用者相互間にも妥当する。本件の場合、安島に対し、原告会社は原告大西の負担部分を越えて弁償をなしたから、その越えた部分につき、被告鈴木および被告会社に対し求償権を行使するものである。

(六)  弁護士費用金六九万五、六九五円

原告会社は原告ら訴訟代理人に本件訴訟を委任するに際し、成功報酬として第一審判決言渡と同時にその認容額の一割を支払う旨約した。よつて、弁護士費用の額は前記(一)ないし(五)の合計額六九五万六、九五七円の一割にあたる金六九万五、六九五円となる。

四  よつて、被告らに対し、原告大西は金三〇万八、〇三八円、原告須藤は金六〇万五、一八一円、原告会社は金七六五万二、六五二円および右各金員に対する本訴状送達の日の翌日より各完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

と述べ、被告鈴木の抗弁事実は否認すると述べた。

被告鈴木訴訟代理人は、「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求め、答弁として、

一  請求原因一の事実は認める。

二  同二の事実中被告車が被告鈴木の所有に属すること、同被告は被告会社に雇用され、被告車をそのセールスのために使用していたことは認めるが、本件事故が被告鈴木の過失に基づくことは否認する。本件事故は原告大西の速度違反および前方注視義務違反によつて発生したものである。

三  同三の事実は争う。殊に原告会社の損害中安島勲に関する損害は原告らのみが負担すべきものである。即ち、原告大西は被告車と衝突して九八・〇五メートル進行してから安島方の建物に突込んで停止したのであるが、同原告は同建物に突込むまでブレーキおよびハンドルに故障がないのにブレーキを踏まず、ハンドルを右に転把することもなく、全く原告車の進むがまゝにまかせてしまつたのであつて、通常ならば九八・〇五メートル進行する間ブレーキおよびハンドル操作によつて自車を停止させるかまたはその進行を変えることが十分に可能なのである。原告大西が右の処置をとらなかつたことが右安島の損害発生の直接の原因であり、従つて、被告鈴木は右損害につき賠償責任はない。

と述べ、抗弁として、

かりに、原告らが本件事故により損害を蒙つたとしても、被告鈴木自身本件事故により金六〇万円をもつて購入した被告車を全壊させられてしまつたのであり、しかも、本件事故は前記の如く原告大西の前方注視義務違反および速度違反の過失が原因となつているのであるから、原告らは被告鈴木に対しその蒙つた損害を賠償すべき責任がある。よつて、被告鈴木は本訴(同被告の昭和五〇年六月九日付準備書面)において右金六〇万円の損害賠償債権をもつて原告らの本訴請求債権と対当額で相殺する旨の意思表示をなす。

と述べた。

被告会社訴訟代理人は、「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求め、答弁として、

一  請求原因一の事実中原告ら主張の日時場所で、原告大西運転の原告車と被告鈴木運転の被告車とが衝突したことは認めるが、その余は不知。

二  同二の事実中被告会社の責任原因に関する事実は否認する。本件事故当時被告鈴木は被告会社日立営業所に中古車管理係として勤務していたもので、セールスの業務には従事しておらず、また、被告車をセールス義務に使用したことも、被告会社からガソリン代等一切を支給されていたこともない。しかも、被告鈴木は被告会社の勤務を終えてから知人の訴外蛭田法子を誘い、いわき市方面へドライブに行く途中本件事故を惹起したものであるから、被告会社としては運行供用者責任、使用者責任とも負うべき筋合ではない。

三  同三の事実は不知。

と述べた。〔証拠関係略〕

理由

一  請求原因一の事実については原告らと被告鈴木との間ではすべて争いがなく、原告らと被告会社との間では右事実中原告ら主張の日時場所で原告大西運転の原告車と被告鈴木運転の被告車とが衝突したことは争いがなく、その余の事実については〔証拠略〕によつてこれを認めることができる。

二  被告鈴木の責任

被告鈴木が被告車の所有者であることは原告らと同被告との間で争いがないから、特段の事情の認められない本件においては同被告は被告車の運行供用者というべきである。よつて、同被告は自賠法三条により本件事故によつて生じた人的損害を賠償すべき責任がある。

また、本件事故は被告鈴木が夜間国道六号線をこれと交差する道路から進行して左折するにあたり、進行道路右側角に国道に面して民家が存在していたのであるが、左右を見通しうる適切な位置で一時停止し、左右の安全を十分確認すべき注意義務があるのにこれを怠り、国道の五メートル位手前で一時停止しただけで漫然左折を開始した過失によつて発生したことは〔証拠略〕によつて認められ、右認定に反する〔証拠略〕はにわかに措信し難いところである。

よつて、被告鈴木は本件事故によつて生じた物的損害についても民法七〇九条による賠償義務がある。

三  被告会社の責任

〔証拠略〕を総合すれば、被告鈴木は昭和四六年五月ごろから被告会社日立営業所に中古車管理係として勤務し、主として同営業所内において中古車の管理、顧客に対する接待、中古車の説明等の業務に従事しており、たまに中古車管理係長の行う中古車の納車、集金等の手伝、中古車の廃車手続を行うこともあつたが、年令、経験の面から中古車の売買契約の締結には関係していなかつたこと、被告鈴木は茨城県北茨城市中郷町石岡一、四五六番地に居住していたが、通退勤に使用するため、昭和四六年六月二日被告会社から被告車を割賦で買受け、右目的に使用していたが、被告鈴木が社用で外部に出る場合には被告車を使用し、被告会社からそのガソリン代の支給を受けたこともあつたが、それ以外には被告会社から何等の利益供与も受けなかつたこと、ところで、被告会社の勤務時間は午後五時までであり、被告鈴木はその職務上右終業時間を越えて勤務することは殆んどなかつたこと、同被告は本件事故当時勤務時間を終え、被告車に乗車して退社したが、かねて顔見知りの訴外蛭田法子をその勤務先である日立市多賀のアメリカ屋靴店日立支店に訪れ、同人をその住所である茨城県北茨城市関本町関本中一、四四一番地まで送り届けることとし、同人を被告車に乗せて午後七時ごろ同人の勤務先を出発したところ、帰宅時間がまだ早かつたところから、福島県いわき市勿来方面にドライブをすることとなり、被告鈴木および右蛭田の住所地である北茨城市を通過していわき市照島に至り、間もなく引返して右蛭田をその住所に送り届けるべく被告車を運転進行中本件事故が発生したこと、以上の各事実が認められ、〔証拠略〕中右認定に反する各部分はにわかに措信し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定した事実よりすれば、被告鈴木が被告車を被告会社の社用に供していたのはその運行のごく一部にしかあたらないし、また、本件事故は被告会社の業務の遂行とは全く関係のない被告鈴木の勤務時間外における私用運転中に発生したものであるから、被告会社が被告車に対して「運行の利益」および「運行の支配」を有していたものとはなし難く、また本件事故は被告会社の被用者である被告鈴木の業務の執行中に発生したものということもできないから、結局被告会社は自賠法三条および民法七一五条による損害賠償責任を負わないこととなる。

四  損害

1  原告大西分

(一)  治療費

〔証拠略〕によれば、原告大西は本件事故により頭部挫傷、右大腿部挫傷、右拇趾骨々折、右小趾骨、中足骨々折兼右足背部挫傷、左手小多稜骨々折兼左手部挫傷の傷害を蒙り、その治療のため事故当日である昭和四六年七月二九日より同年八月一二日までいわき市小名浜字本町六〇番地石井医院に、同月一六日より同年九月一一日まで香川県観音寺市観音寺町甲一、五三八番地の八羽崎病院に入院し、治療費として石井医院に対し金一四万二八三二円、羽崎病院に対し金四万二、四三六円合計金一八万五、二六八円を支払つたことが認められる。

(二)  入院雑費

入院雑費として少くとも一日金二五〇円を要することは公知の事実であるから、前記入院期間四二日間分で合計金一万五〇〇円となる。

(三)  逸失利益

〔証拠略〕によれば、原告大西は本件事故当時原告会社に運転手として勤務し、給料として昭和四六年四月(稼働日数二六日)金一一万五五〇〇円、同年五月(同二七日)金一二万三、〇六〇円、同年六月(同二六日)金一〇万二、九七〇円を得ていたが、本件事故にあつたため事故当日より同年九月一一日までの四五日間欠勤せざるを得ず、その間の給料を支給されなかつたことが認められるところ、右事実によれば、原告大西の一日分の給料の割合は金四、三二三円(円未満切捨。以下同じ)となるから、欠勤期間四五日間分で金一九万四、五三五円となり、従つて同額が得べかりし利益の喪失額ということになる。

(四)  慰謝料

原告大西の前記受傷の部位、程度、治療期間その他の事情を考慮すれば、同原告が本件事故によつて蒙つた精神的苦痛を慰謝するに相当な金額は同原告主張の如く金二一万円を下らないものと認められる。

(五)  被告鈴木は、本件事故は原告大西の過失に基づいて発生したところ、同被告運転の被告車は本件事故によつて全壊したため、その購入価格金六〇万円相当の損害を蒙つたから、同損害賠償債権をもつて、原告らの本訴請求債権と対当額で相殺する旨抗弁するところ、〔証拠略〕によれば、原告大西は本件事故現場の交差点を通過するにあたり法定速度時速五〇キロメートルを二〇キロメートル越える時速七〇キロメートルの高速度で進行し、それも本件事故発生の一因をなしたことが認められるところ、被告車が本件事故によつて損害を蒙つたとしても、同一交通事故によつて生じた損害賠償債権相互間においてもその相殺は民法五〇九条の規定により許されないものというべきであるから、被告鈴木の右抗弁は採用できない。

(六)  しかしながら、当裁判所は職権をもつて原告大西の前記過失を損害額の算定にあたり斟酌すべきものとし、その過失割合を原告大西につき三、被告鈴木につき七と定めるのが相当である。しかして、原告大西の前記損害額合計は金六〇万三〇三円となるから、原告大西の前記過失を斟酌すれば、その請求しうべき損害額は金四二万二一二円となる。

(七)  損害の填補

原告大西が自賠責保険金三二万二六八円の給付を受けたことは同原告の自認するところであるから、残損害額は金九万九、九四四円となる。

(八)  弁護士費用

〔証拠略〕によれば、被告鈴木が任意に損害を賠償しないので原告大西はやむなく本訴提起を原告ら訴訟代理人に委任したことが認められるところ、本訴請求額、認容額、事案の難易、訴訟遂行の状況その他諸般の事情を考慮すれば、原告大西が損害として請求しうべき弁護士費用の額は金一万円であると認めるのが相当である。

(九)  よつて、原告大西の残損害額は金一〇万九、九四四円となる。

2  原告須藤分

(一)  治療費

〔証拠略〕によれば、原告須藤は本件事故により左下腿挫創(伸展筋腱断裂)の傷害を蒙り、その治療のため、事故当日である昭和四六年七月二九日より同年八月一一日までの一四日間いわき市小名浜小石字君ケ塚二五番地の八、磐城中央病院に入院し、同月一三日より同月三一日までの一九日間香川県観音寺市植田町字西下一、八〇三番地細川整形外科医院に入院し、さらに同年九月一日より同月三〇日までの三〇日間同医院に通院したが、治療費として磐城中央病院に金四万三、七〇五円、細川整形外科医院に金七万五、五三〇円合計金一一万九、二三五円を支払つたことが認められる。

(二)  入院雑費

原告大西と同様一日金二五〇円として入院期間三三日間分で金八、二五〇円となる。

(三)  逸失利益

〔証拠略〕によれば、原告須藤は本件事故当時原告会社に運転手として勤務し、給料として昭和四六年四月(稼働日数二六日)金一四万七、四〇〇円、同年五月(稼働日数二八日)金一五万四、七八〇円、同年六月(稼働日数二五日)金一三万五、五〇〇円を得ていたが、本件事故にあつたため事故当日である同年七月二九日より同年九月八日までの四二日間欠勤せざるを得ず、その間の給料を支給されなかつたことが認められるところ、右事実によれば、原告須藤の一日分の給料の割合は金五、五四〇円となるから、欠勤期間四二日間分で金二三万二、六八〇円となり、従つて、同額が得べかりし利益の喪失額ということになる。

(四)  慰謝料

原告須藤の前記受傷の部位、程度、治療期間その他の事情を考慮すれば、同原告が本件事故によつて蒙つた精神的苦痛を慰謝するに相当な金額は同原告主張の如く金一九万円を下らないものと認めるのが相当である。

(五)  弁護士費用

〔証拠略〕によれば、被告鈴木が任意に損害を賠償しないので、原告須藤が本訴提起を原告ら訴訟代理人に委任したことが認められるところ、本訴請求額、認容額、事案の難易、訴訟遂行の状況その他諸般の事情を考慮すれば、同原告が損害として請求しうべき弁護士費用の額は金五万円と定めるのが相当である。

(六)  よつて、原告須藤の損害額は金六〇万一六五円となる。

3  原告会社分

(一)  原告車修理費

〔証拠略〕によれば、原告車は原告会社の所有であるところ、本件事故によつて破損したため原告会社は香川県三豊郡豊中町笠田笠岡株式会社豊中自動車整備工場に修理を依頼し、その修理代として金二〇八万一、九五七円を支払つたことが認められる。

(二)  原告車回送料等

〔証拠略〕によれば、原告会社は修理のため原告車をいわき市より前記株式会社豊中自動車整備工場まで原告会社の車両を使用して運搬し、その運賃として金五万五千円を要し、また、原告車を右運搬車に積込むのにレツカー代金二万円を要したことが認められる。

(三)  事故処理費

〔証拠略〕によれば、事故当日原告会社はその東京営業所長を事故現場に派遣し、負傷者救出等の事故処理等にあたらせたが、その費用として金二万円を必要としたことが認められる。

(四)  休車料

原告会社は事故当日より原告車の修理が完了し、前記整備工場からその引渡を受けた昭和四七年二月二一日までの二〇八日間原告車が休車したことによる一日金一万円の割合による損害の賠償を求めるのであるが、〔証拠略〕によれば、原告車がその修理のため、前記期間休車せざるを得なかつたことが認められるけれども、原告車の休車による損害が一日金一万円であることについては右証人の証言のみによつてはたやすくこれを認めることができず、他に右損害額を肯認しうべき適確な証拠も存しない。

(五)  過失相殺

以上のとおり原告会社の損害額合計は金二一七万六、九五七円となるところ、原告大西が原告会社の従業員であることは前記のとおりであるから、原告大西の過失は原告会社の損害額算定にあたつても被害者側の過失として斟酌せらるべく、従つて、原告会社の損害額は金一五二万三、八六九円となる。

(六)  安島勲への賠償金

〔証拠略〕を総合すれば、被告車と衝突した原告車は衝突地点から約九〇メートル離れた原告車進行方向左側の安島勲方建物に突入し、同所に保管されていた自動車七台および同建物および機械設備等を大破し、そのため、同人に対し多大の損害を与えたが、原告会社は昭和四七年二月一〇日安島との間で同人の損害額を金二七〇万円として、その支払の責に任ずる旨の示談契約を締結し、その後これを完済したことが認められる。ところで、被用者と第三者との共同過失によつて惹起された交通事故による損害を賠償した使用者は、第三者に対し、第三者と被用者との過失の割合によつて定めらるべき第三者の負担部分について求償権を行使することができるところ、被用者たる原告大西と第三者たる被告鈴木との過失割合は前記の如く三対七であるから、同被告の負担部分は金一八九万円となり、従つて、原告会社は被告鈴木に対し同金額を求償しうることになる。

(七)  弁護士費用

〔証拠略〕によれば、被告鈴木が任意に損害を賠償しないので、原告会社は原告ら訴訟代理人に本訴提起を委任したことが認められ、本訴請求額、認容額、事案の難易、訴訟遂行の状況その他諸般の事情を考慮し、原告会社が損害として請求しうべき弁護士費用の額は金三四万円と定めるのが相当である。

(八)  よつて、原告会社の損害額合計は金三七五万三、八六九円となる。

五  以上の次第で、被告鈴木は原告大西に対し金一〇万九、九四四円、原告須藤に対し金六〇万一六五円、原告会社に対し金三七五万三、八六九円および右各金員に対する訴状送達の日の翌日(それが昭和四七年一一月八日であることは記録上明らかである)より完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務があるから、原告らの被告鈴木に対する本訴請求は右の限度で正当として認容すべきもその余の請求および被告会社に対する請求は失当として棄却を免れない。

よつて民訴法八九条、九二条本文、九三条一項本文、一九六条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 太田昭雄)

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